T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

405・データは一旦咀嚼して

 今日、あるコンピレーションの解説を読んでいたら、柏原芳恵「ちょっとなら媚薬」が“15作目のシングル”と書かれていて、おやっ?と思った。というのは、当時はオリコンを毎週購入していて、「記念すべき10thシングル『あの場所から』」や、「19歳にして19作目の『最愛』」と書かれた広告やCDレビューを見ていたので、その感覚からすると2つほど進んでいるとすぐさま思い出したのだ。確かに、イレギュラーな企画シングルの「しあわせ音頭」や「よしえのクリスマス」をいれると、15作目なのだが、事務所サイドとしては「○作連続オリコン連続TOP10入り」を86年頃まで掲げていたし、この2作は本来は数えるべきではないのだ。しかし、Wikipediaにはなんの断りもなしに「15作目」と書かれている。きっと、執筆者は、彼女にさほど思い入れがなく、Wikipediaを丸写ししたのだろう。もし、上記の事情を知っていたならば「企画盤を含め15作目」と書いていただろうし。残念なことだ。

 そして、同じライナーノーツに研ナオコ「愚図」についても「30万枚近いセールス」と書いていたが、オリコン100位内だけで27.2万枚で、半年もチャートインしていた作品ならば、出荷で35万枚前後、100位圏外でもロングセラーだったことから考えれば、実売でゆうに30万枚は超えているはずだ。つまり、「30万枚近いセールス」というのは間違いとなる。せめて、確証がないならば「27万枚以上」とかくとか、「オリコン調べでは約27万枚」と記すべきなのだ。これまた、データに対する扱い方が雑で残念だった。今や、データの閲覧だけなら、誰でもできるので、それを一般の方に読み解くのがプロとして必要なスキルだろう。

 そう考えると、これだけデータが氾濫する中で、どうやってデータを読み解けば良いのか、それぞれの業種で指導するような立場がますます必要な気がしてきた。ちなみに、ジャケット画像は、オリコンではたった4万枚弱なのに、100位〜200位、さらにはその少し下で20年前後ランクインしていたことにより、実売では60万枚を超えている中村美律子河内おとこ節。私が業界に入りたての頃、東芝EMI(当時)にお邪魔した際、そのデータを教えてもらって驚愕した覚えがある。(音楽業界に入るまでもこの歌がロングヒットしていたことは知っていたが、まさか50万枚以上も実売とオリコンが乖離しているとは思っていなかったのだ。)この経験もまた、データの読み方を注意する大きなキッカケになったように思える。