T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

158・似てしまうのは大好きな証拠

 最近は休み時間に槇原敬之のアルバム『Heart to Heart』をよく聞いている。この作品はジャケット通り、いろんな段階での、また、いろんなスケールでのラブソングがあってとても聞きやすい。客観的に見ても、今年のJ-POPの中でかなりの名盤だと思う。
 私個人が聞きやすいのは、もう一つ理由があって、今回のアルバム、ものすごく中島みゆきの、しかも近年の作風に似ているからだ。今、ざっくりと検索をかけてみても、そんな感想は書かれていないので、自分だけの感覚なのかもしれないが、「林檎の花」は「五月の陽ざし」と雰囲気が似ているし、原発擁護ソングと解釈が独り歩きした「Appreciation」のわざとチープな感じは「あたいの夏休み」を思い出すし、「軒下のモンスター」の主人公は「アンテナの街」に住んでいるし、「風は名前を名乗らずに」あたりの牧歌風は「心守歌」風だし、「今日の終わりにありがとうを数えよう」で「ありがとう」案件を重ねていく所は、例えば「眠らないで」など本人も歌詞が覚えられない中島みゆきのパターンだし、他にも中島みゆき作品を想起させる点多々あり。以前から講話にも通じるような歌詞が多くなっていたこと自体、中島みゆきと共通しているのだけれど、ここへ来てぐっと近づいた気がする。
 とはいえ、パクリとかそんな低レベルではなく、ちゃんと自分のオリジナルに仕上げているし、そもそもアルバムの中の地味な1曲に似せるのなんて策略として有りえないし(笑)、純粋に好きだと似てしまうものなんだなあ、とあらためて思った。あと、これは、単なる共通点からだけど、両者とも楽曲に犬好きを反映させているのも微笑ましい。

 似ていると言えば、先日来、書いている『伊藤咲子BOX』で取材させていただいたご本人のインタビューで、レコーダーから書き起こしていて伊藤咲子さんと岩崎宏美さんの語彙がかなり重複していたのも驚いた。これは、私の編集作業の問題だと思われたかもしれないが(汗)、本当に同じ言葉が多かったのだ。そういう所からも、二人は互いに信頼できる友達なんだと確信した。それと同時に、常に同じ実力派として比較され、それなのに様々な要因から、セールスなどの結果やその後の遍歴には大差がついて、それでも相手を疎んだり恨んだりしないというのは、本当に素晴らしいことだと思う。もし、私が同じ立場だったら・・・と考えると、伊藤咲子という人の天性の(天然の?)明るさに感服せずにいられない。もちろん、宏美さんに親友に対してヒットが多いからという驕りがなかったことも重要だっただろう。
 そんな所からも、長年の絆って強靭なものだと思うし、現役歌手・伊藤咲子に、そろそろ、これまでのご褒美が来てもいいなと思うのだ。女性同士の友情ソングといえば、私の中ではヒロリン『FULL CIRCLE』の「潮風がつぶやいて」。シングル曲じゃないけれど、大人の休日という感じがなんとも心地よいので、よろしかったらどうぞ。できれば、いずれなくなる復刻盤で(微笑)。