T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

230・四面楚歌と人の真価

 先日、あるアーティストAの移籍に関して、有望視されていたメーカーXには決まらなかった理由が取材の裏話をまとめていて分かった。それは、Aが所属する事務所の大先輩Bが、かつて、女性歌手Cと交際しており、それが様々な波紋を呼び、マスコミも芸能界の多くも大手事務所側についた中で、その音楽性を信じたある方が、その後も女性歌手Cを援護し続け、現在メーカーXにいるということが20年以上も尾を引いており、最終決断に影響したようだった。

 私は、“ライバル事務所のアイドルを表紙に使うなら、以後うちのアイドルはオタクには一切出さない”と宣告された出版社の話(いつもお世話になっている日経BPではない)とかも聞いてきたので、その話自体には驚かないが、一つの決断のために20年以上もダメージを受け続け、しかしながら、それ以外の部分でコネクションを築くことで徐々に包囲網を解き、結果として大活躍されてきたその方の素晴らしさにようやく気付き、あらためて感心した。これは、一ファンとしてその歌手を応援してきたのとはレベルが違う。あるいは、日常的に匿名の抗議の電話やメールを受け、仕事への妨害が続いても、そのファンであり続けられるかと、自問してみればその並大抵ではない努力が分かることだろう。

 私自身、先日も、「(超大手事務所強力推薦で)大賞を取ったアーティストよりも、別のアーティストの方が実際のセールス効果が高かった」と、単純にその数字をある場所で述べただけなのに、ある業界内の友人から「お前、危ないこと書くなよ〜(苦笑)。刺されるぞ!」なんてキツいジョークを言われるほど、この手の話は業界中がデリケートで、実際に裁判沙汰にまで発展したウガヤさんの一件もある。だから、執筆や企画で矢面に立っている以上、悪意がないにせよ、そういった問題に巻き込まれる可能性もゼロではない。

 もし、自分が四面楚歌になった時、何人の人が守ってくれるだろうか。

 もし、誰かが四面楚歌になった時、自分は何人の人を守れるだろうか。

 他とのつながりが何かと数値化される昨今だが、この数こそが真価だと感じる。