T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

280・中島みゆき『常夜灯』と新作ペース

常夜灯

中島みゆきの新作アルバム『常夜灯』(10/24発売)を、2か月先行で聴かせてもらっているが、秋めいたせいもあってぐっと心に染みてきた。本作の大きな特長は、一人称が“僕”の歌が1曲もないことだろうか。その意味では03年の『恋文』にも似ているが、あちらは先行シングルの「銀の龍の背に乗って」が“僕歌”だった。ただ、本作では“僕”とは出てこないものの、人生を鼓舞するような楽曲も半数ほどあるので、ラブソングばかりじゃなく聞き飽きない(みゆきさんの場合、“私歌”でも、ラブソングとも限らないが(微笑))。アレンジの既聴感がやや大きいのは多少気になるものの、それ以上に還暦とは思えないほど歌の上手さが際立っている。か細い声、可愛い声、たくましい声、やけっぱちな声、艶っぽい声と、実に様々な声で様々な楽曲を歌い分けていて感動を覚える。世間的には、山下達郎小田和正に「(ベテランの中で)歌が上手い」の評価が集中しているけれど、私は中島みゆきも相当に歌が上手いと思っている。(というか、小田和正は「歌が上手い」というよりも「聴きやすい」ではないかと、個人的に思う。それとも、「聴きやすい」を「歌が上手い」と言うが為に、中島みゆきは「歌が上手い」に該当しないのだろうか。)

あと、みゆきさんで驚くのが、ほぼ毎年新作を発表しているということ。これも、凄いことだともっと評価されてもいいと思う。今世紀の新曲アルバムのペースを他のTOP10常連のベテランと比べてみると、(セルフ=セルフカバー)

中島みゆき→01,(02セルフ多数),03,(04セルフ),05,06,07,09,10,11,12
松任谷由実→01,02,04,06,09,11
長渕剛→01,03,07,09,10,12
桑田佳祐→02,(05サザン),(08 DVD+集大成CD),11
小田和正→(01セルフ),05,11
山下達郎→02,05,11
竹内まりや→03,07

と、その数は圧倒的!
(ちなみに、SSWではないけれど、宏美さんも
岩崎宏美→03,03,04,05,06,(07セルフ),08,09,10,12
実は物凄く働いておられる。ここにも我々は感謝すべきですよね♪

ある程度シングル曲やタイアップ曲が溜まってから、そのハーフベスト的なものをリリースした方がビッグヒットになることは確実だが、そうじゃなくストイックにリリースしていくところも好き。ベスト盤の発売なども含め、もっと売れてほしいとも思うし、突然そんな戦略に転換しても大歓迎だが、こんな所からも不器用さや無骨さに憧れるのだ



今日も河合奈保子復刻DVDを強引に(笑)ご紹介。『NAOKO '86 STARDUST PARADISE in EAST
は、前半8曲が最新海外録音の『9 1/2』と、それに関連付けてオールディーズ中心、後半5曲が(当時)近年のヒット曲中心と、ちょっと展開が忙しいんだけれど、まぁこれもビデオを60分内に収める為にあれこれ割愛した結果なんだろうな〜と思うし、色んな曲を次々に歌っていく河合奈保子ってやっぱり凄いな〜と思えます。なにより、ラストの「ハーフムーン・セレナーデ」の絶唱に酔えるし、これ1曲だけでも持っておきたい1枚。