T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

301・アマはダリア、プロはレクイエム?

ANSWER<初回生産限定盤>

2009年に発売されたアンジェラ・アキの3rdアルバム『ANSWER』。

私は本作の中で断然好きなのが「ダリア」という曲だ。

この歌を過去の恋愛を綴っているのだが、歌詞があまりに赤裸々で胸に刺さりまくった。どんなに遅くても帰りを待ち、どんな小さなことでも報告した若き同棲時代。しかし、嘘がキッカケでギクシャクし、「もう無理だ」と別れを告げられ、荷物をまとめ飛び出したその後。しばらく立ち直れずにいたが、ようやく「ダリア」を見て、世界のどこかに生きているかつての恋人を想い、過去と向き合えるようになったという内容で、庭に咲く「ダリア」はその初恋の象徴なのだという。この曲に至るまでの、LIVEの長い長いMCからも本人の実体験から生まれた楽曲なのだろう。

一方、当時のインタビューでは、プロの聞き手たちが、注目していたのはリード曲の「手紙〜拝啓、十五の君へ〜」と、アルバムオリジナルの「レクイエム」という曲だった

こちらの歌は4つの楽章から構成されており、事故で亡くなることが決まった女性が、一晩猶予をもらって大切な母と恋人に御礼をいうという、これまたドラマティックな内容。確かに、当時の紙資料でも、10分36秒もある意欲作だと書かれていた。

確かに、これも良いけれど。。。。深い哀しみや愛しさにまで言及しているのは、圧倒的に「ダリア」では?どうして、誰か一人でもこっちに興味を持たないの??と当時、10ほどある活字および電子媒体のインタビューを舐めるように見ては、歯がゆかった。いくら長時間で4部構成で意欲作だとしても、人の心に刺さる曲というのは、また別の基準ではないのかと。でも、もしかすると、自分の感覚がまたもやズレていて(笑)、やっぱり自分はプロ失格なのかな、とも思った。

しかし、今回、この曲についてあらためて調べ直す機会があり、ネットで調べてみると、実際のアルバムやLIVEのリスナーの反応は、圧倒的に「ダリア」に傾いているのだ。アルバム内の1曲なのに、かなりの思い入れを見出すことができ、とっても嬉しくなった。やっぱり、私は、プロでお仕事をいただいているが、その感覚は非常にアマチュアっぽいのだろう。それが幸か不幸か分からないが、今後もそうやって、ニュートラルに名曲を発掘できればいいなと思った出来事だ。