T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

326・SONG VS MUSIC

愛愁

昨日、Twitterで、ある方が「坂本冬美、ヒット曲から遠ざかっている」という発言があり、「あれ、そうかな?」と思い、調べてみたら、昨年の5月に出た演歌路線「桜の如く」はオリコン最高位21位、売上げ1.8万枚で、彼女の中では、そんなに良い方ではないが、演歌・歌謡曲の中では年間20位くらいでそんなに悪くもない売上げ。他方、今年出された歌謡曲路線の「人時(ひととき)」は同最高位58位、売上げ0.5万枚とかなり落ちているが、本作がリードトラックとなっているJ-POP作家によるアルバム『愛してる・・・Love Songs III』はオリコン最高位42位、累計売上0.9万枚(その売れ方から実際には1.5万枚は売れていそう)と、演歌・歌謡曲アルバムとしてはかなりのヒットだ。つまり、ヒット「曲」はないが、ヒット「アルバム」は、ここ数年続いていて、おそらくここ数年のポップス戦略でアルバム・アーティストになったのだと思う。(だから、毎年出るようなベスト盤でもTOP100入りするほどに!これも演歌・歌謡界では異例)

考えてみれば、同レコード会社に所属する由紀さおりもアルバムは30万枚以上売れているが、最新シングル「季節の足音」(秋元康作詞)は200位内にも入っていない松任谷由実のベスト盤も50万枚をゆうに超えているのに、3月に出た最新シングル「恋をリリース」は200位内にも浮上せず、累計売上は5000枚を下回ったままだ。一緒に店頭展開されていないお店も多く、単にリスナーの特徴というよりも、メーカー側の姿勢(シングル、ソングも一緒に売ろうとしない)も大きく影響していると思う。

そこで、はたと気が付いた。私はEMIというメーカーが好きだけれど、なんか合わないなと思うことが度々あったが、それは

・「ソング」よりも「ミュージック」

・「シングル」よりも「アルバム」

・「ボーカリスト」よりも「アーティスト」

をそれぞれ優先しているような印象を受けるからだ。確かに、かつてにおいてもアイドルを育てるのが決してうまくなかったし、シングルヒットとアルバムヒットのTOP100ランクイン数が、断然異なるのもこの会社の特徴だ。(この逆がテイチク。)シングル一発よりもアルバム全体でその人の完成度を見る傾向のある私だが、やっぱり歌に向き合うアーティストやメーカー、リスナーが好きだなとあらためて思った。写真は、私がEMIの中でかなり好きなアルバムの一つである柏原芳恵『愛愁』。アイドルファンの中で、演歌アレルギーのある人が多いのか、結構な確率で中古CDで見かけます。私は、彼女のアルバムのなかで一番好きかなぁ。歌心が感じられます。