415・鷹の歌
「1人の人が同じCD(特典違い)を1000枚まとめて買う作品Aと、1000人の人が1枚ずつ買う作品Bと、どちらが良い作品と言えますか。またその理由を答えなさい。」
なーんて、問題を入学試験なり入社試験なりに出題してくれる所ないかなぁ〜。
もしかして、「作品Aも作品Bも同じ売上だから変わらない」っていう人が今一番多いのかな。それとも、「作品Bだ」と答える人の中には理由は分からず、ただ単にAKB批判になびいただけという人も多いのかな。
勿論、どちらも市場の活性化には“良い作品”なのだが、音楽として後世に残すためには、やはり多くの人に愛される作品Bを推していきたいなと思う。作品Aは、そこに音楽がなくとも成立することがあり、広がる可能性が非常に少ない。ゆえに10作以上TOP10入りしながらも、こんなに楽曲を聞いている私ですら殆ど知らないというアーティストもいる。(でも、実際に聞いてみると、何とも複雑な曲想で、面白いな〜と感心したアイドルグループもいるのだ。)
こんなことを考えると、もしかして、ここ数年で音楽業界に入ってきた若い方は、上司から売上達成のために「作品A」を目指せと言われたり、またそれを自覚して効率よく「作品A」を目指したりしているのかなぁ。勿論、時代は逆戻りできないけれど、多くの人が良いと思っていたものが本当に上位に来ていた時代を経験してきた自分は幸せだなと思った。そこに、自分なりの基準を見いだすことが出来たからだ。
今の世の中、全員が全員「作品A」を目指している訳ではなく、「作品B」のような売り方でも皆に広がるような楽曲を作ったり、売れるよう努力したりしている人も、またそれを支持している音楽ファンも少なからずいるのだ。
だから、これからもそういう作り手や聴き手をつなぐ仕事を続けていきたい。
今回のBGMは、ジャケットの中島みゆき『真夜中の動物園』収録曲「鷹の歌」。
時として「楽な道」ではなくとも、この10年を振り返ってみると「楽しい道」だったと確信している。