T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

[仕事]492・機械に負ける日が来ても

いつか離れる日が来ても

以前、ここで書いたことの繰り返しになるが、2年前から配信サイトでの選曲に携わっている。そのサイトは以前、レコード会社から提供された新曲音源をただ並べるだけだったのだが、番組出演情報や季節、時事ネタに沿った選曲、さらには新曲のみならず “記憶の名曲”となる旧作も配置すると、このダウンロード不況の中で確実に売上を伸ばすのだから、とてもやり甲斐を感じるし、日々の勉強にもなっている。

だが、囲碁や将棋がそうであるように、この選曲という業務もいずれすべてコンピューター任せになるのかもしれない。

(ちなみに私、人間対コンピューターが1勝3敗の記事を見て、悲観どころか「人間」が凄いと感動したクチ。だって、過去の勝負手を研究しまくった(というか、パクリまくった)コンピューター何百台分を駆使してでも、たった1人の人間が、時に勝ちうるなんて、夢のあるお話だと思いません?棋士の方ってホントに凄い!自分もそれくらい信頼されたいな〜(笑)。)

ただ、現状は、そのコンピューターに楽曲に関する情報を人の手で入れていく必要がある。発売年、製作者、歌詞、BPMなど単一的な情報は画一的に入力できるのだが、特に、感情ワード部分のフラグの立て方がまだまだ難しい。

実は、ある会社で楽曲データベース入力を手伝ったことがあるのだが、(実際に作業したアーティストは伏せておくとして)、例えば、吉田美和の楽曲って、別れの歌でも次の希望に繋がるものが多くて、その時に「切ない」や「明るい」にフラグを立てるかどうか、入力者によって分かれてしまう。また、逆に中島みゆきの歌で、困難に打ち克つような内容でも、その「困難」自体にダメージを受けて、「応援歌」とは思えず「暗い」の一点張りでフラグを立てる人もいそうだ。

しかも、同じ人でもその時の心理状態で感情的なキーワードがブレることもあるし、時流に乗って、その歌が結婚ソングや卒業ソングに生まれ変わるものもある。そういった部分のアップデートをことごとく実行するには、あまりに現状の人力では追いつかない。・・・という印象を私は抱いた。

とはいえ、いつか、そういった部分も機械的に自動入力していくツールが完成するならば、私のような仕事はもうなくなる、のかもしれない。

けれど、いつかコンピューターに負けたとしても、「あなたの、そのこだわりがいいんだよ」と選んでくれる人がいてくれたらいいなと思う。この15年間で、音楽を取り巻く環境は大きく変わり、この先もまだまだ時代は変わるけれど、音楽がある所に人がいることを忘れないでおきたい。そういえば、初音ミク、数年前は年間TOP200に数作入るほどだったのに、最近は殆ど聞かないな。。。(まず握手が出来ないのがシングルCDのヒットを持てないという問題もあるけれど汗)

ジャケットは、平井堅の2008年のシングル「いつか離れる日が来ても」。本作を含め、平井さんの歌は、時々、終わることしか思い浮かばない、だけど終わったとしても続く愛が描かれているように思う。