T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

353・くれない漁歌

中村美律子/くれない漁歌

1994年10月19日発売のシングル。オリコン最高位54位、TOP100登場週数7週。

『壺坂霊験記』を題材としたセリフ有り浪曲ありの「壺阪情話」、セリフの掛け合いも面白い五木ひろしとのデュエット「浪花物語」と20万枚ヒットが続いた後なのに本作で大コケしてしまい、しかも追い討ちをかけるように、その年の紅白出場の東芝枠が大手事務所猛プッシュの男性歌手に渡されてしまい、94年にヒットがあったにも関わらず(特に、アルバムカセットは年間1位、6万本という快挙)年末の紅白歌合戦にも落選、と踏んだり蹴ったりのメモリアル作(?)のせいか、大全集的なベスト盤以外には一切収録されていないシングル。

確かに、拍手のタイミングも難しく(1コーラスが終わったと思ったら、またそこから雄叫びが始まるという)、また歌唱する本人も喉のシワが凄いことになるほどメロディーの展開も難しく、「これ売れないわ」と言われたら誰もが納得しそうな歌だ・・・・けれど、またもや私は大好きな1曲。多分、美っちゃんの中ではTOP10レベルに好きな1曲。

まずドラマティックな歌詞が好き。

主人公の女性の夫は漁師だったらしい。が、北の荒海にさらわれてしまう(1番)。それを引き継いで、姉御と呼ばれてコップ酒を飲む(2番)。忘れ形見となる我が子の寝顔が命綱で、夢で夫に会う(3番)。と、なかにし礼阿久悠が書きそうなヘビーな歌詞。確か、作詞の島崎広子さんは、「おもいで酒」の高田直和の娘さんだったと思います。

そして、メロディーも「北の漁場」の女性版を狙ったであろうダイナミック歌謡(ハードポップ系(笑))で、演歌と言えどもノリノリで聴き応えあり。でも、ジャズ出身の冨田梓仁先生の曲なので細かい譜割りが多くて歌いこなすのは難しい。

それにしても、ジャケットからして、なんか三流演歌歌手風で、その前後の文学的にも美的にも完成度の高いものとは段違い(苦笑)。やっぱりここでメーカーとして脱力するように企てていたのかなぁ(なんて)。

ということで、全然需要のない1曲だけど、世界中でたった一つでもこのレビューがあれば、と思い作ってみました。