T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

44・基本はリアルマーケティング

 今年1年は、CDの企画、制作、宣伝、営業、さらにはCD購入者・LIVE来場者のアンケート分析やヒアリング、はたまた出版社における執筆など様々な現場に立ち会って仕事をしてきたが、一つの傾向が浮かび上がってきた。


 それは、アーティストに近い仕事をしている人ほど、お客さんの動向をあまり見ていないということだ。(もちろん例外となるであろう素晴らしい方もいることを予め申し上げておきたい。) 


 例えばその1:良い作品を作ろうと制作だけに時間をシェアし、どこでプロモーションしようが、どのお店で営業しようが全く考えていないディレクター。アーティストや事務所と呑みに行く時間があるのなら、会合に少し遅れてでも、自分で媒体の一つでもディレクターならではのお勧めエピソードを語ったり、お店で自分の関わった作品がどのコーナーでどうPRされていて、どんな人がどこに注目して買ってくれているのか数分でも定点観測したらどうか??


 例えばその2:憧れのアーティストにインタビューが出来たというだけで有頂天になっているライター。自分が文章でどう表現すれば、より多くの人にその作品の素晴らしさが伝わるのか、また掲載された活字やWeb媒体の中で、本当にそのコーナーが目に止まるのか、そしてそれが実際に読者に口コミで伝播するのか考えたことがあるのか??


 ・・などと疑いたくなることが少なくない。まぁ、アーティストに限らず才能のある人はオーラが漲っているので、その近くにいただけで自分が偉くなったように錯覚するのは分からなくもない。また、実際に私の仕事の中でも一般の方に羨ましがられるのは、メーカーの経営コンサルティングよりも遥かに安いギャラでのアーティスト・インタビューなので、アーティストに近い場所がある種の“ユートピア”に映るのも仕方あるまい。


 しかし。当然ながらスタッフはスタッフであって決してアーティストではない。そして、これまた当然ながらお客さんがいなければ、スタッフなんて初めから必要がない。だからこそ、お客さんの居る場所やニーズを常に考えながら、生み出される作品を届けようと果敢に行動する必要があるのではないか。ましてや、CD不況。ぼやぼやしてたら、中古、レンタル、違法・合法ダウンロードなどなど、新品を回避する方法なんていくらでもあるのがこの世の中だ。時代のせいにするくらいなら、初めからそんな仕事、辞めてしまえばいいのにと思う。もっと情熱を持って売れてほしいと願っている一般の方に代わってあげてほしいほどだ。


 そんな状況をみて、理論が難しいとか専門の部署があるから十分とかそういうのじゃなく、リアルな意識レベルでマーケティングって必要なのだとあらためて思った。私自身も、もっともっと多くの現場と、多くのデータを分析して、より多くの作品が、より多くの人に届くよう精進しなければ。答はいつも変化している。だから、難しい。だから、面白い。


 以上、今日は自分への戒めも含めて呟いてみました。アーティストに還元する形で音楽を楽しんでおられる方には罪はございませんので念のため(微笑)。