T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

164・「8割で前進」≠「妥協」

前のコラムからの続き)ということで、早見優さんの30周年ベストとアルバムBOXのお手伝いをさせていただいております。

とはいえ、私は「アルバムも良いので全部復刻して」企画書や「他にもこんな曲がありますよ〜」リストと、ライナーノーツ聞き手&補足と、ブックレット用に未公開写真の粗より(そこから本人が最終セレクト)をした程度で、私の作業はもう峠を越しまして

これからの作業となる許諾最終確認とかリマスタリングとかデザインとかブックレット編集とか重要な部分は、それぞれのプロの方がメイン担当なので、あとは祈るばかりなのですが。

いやぁ、CD復刻の仕事は「やるたび うれしいけれど 叶わぬ時は 二倍くるしい」!

きっとね、CD収録曲について、もっとレア音源があるはずだ、というご意見があると思うのですよ。

でも、その収録曲の音源自体がなかったり、活動中の本人サイドの意向に沿わなかったり、製造コストに見合わなかったり、管理会社の許諾が下りなかったりで、実現しない場合が多々あるのです。もともと発売されていたものをストレートに復刻するのと、未発表の1曲を世に出すのとは、扱いの複雑さが全然違うのだと、やってみて初めて学びました。(その意味で、ストレート復刻を何回やっても、お店に大量に置かれて、コアなファンの人もマスト買いする松田聖子さん関連は本当に羨ましい!)

そして、それ以上に権利処理がややこしいのがDVDの映像。

(アーティストが優先されるのは理想的な形ですが)今回はご本人サイドの要望が強く反映されています。私のような浅識なファンは「見てみたい〜」と思いますが、コアなファンの方は「そんな映像よりも、あれも、これもあるはず!」と思うかも。・・・ですので、過剰な期待になりがちな方は「(+DVDで再販制度を外れることで)値引されるだけオトク!」くらいに考えていただければと思います。あのフロンティアBOX『ぼくらのベスト』には映像は全くなかった訳ですから、それよりマイナスは有り得ません

ちなみに、昨年8月に出した伊藤咲子BOX、あれも「EMI+日テレ」で出し切った結果55分しかなかったけれど(これも一部の方に手抜きだとお叱りを受けました)、その55分にしたって、映りこんでいる人すべてに、レコード会社が権利者に連絡を取って(演奏チームにまで配慮する必要があるなんて驚き!大量のハトに肖像権がなかったのがせめてもの救い(笑))、NGの人や連絡が取れない人は逐一ボカシたり、そこの映像を使わないために他の部分を引き延ばして音だけ使ったり、その作業工程のあまりの複雑さに、こんなことをしてまで発売してと希望してしまったのか〜!!と、「こんな番組出てましたよ」なんて、のほほんとリストを提出していただけであとはスタジオで傍観していた私は、もう何とも居づらい状況で申し訳ない気持ちになりました。だから、伊藤咲子BOX、他と比べたらかなり小ロットな作品ですが、手間はエラくかかっています

ですので、優さんのBOXも“オークションで高騰しまくっていたオリジナル・アルバムがすべて今の音でCD化される”を合格基準にしていただければとても嬉しいなぁ。何より優さんご本人が、「私ごときが出してもらえるんだ!」ってすごく喜んでいらっしゃるし。決して妥協はしないのですが、最善を尽くした結果が80点ならば、それは「存在していい」としてもらえれば。もちろん、マイナス20点は事実として受け止めるべきですよね。

うーん、他にもあれこれ考えると、減点対象が山積で胃が痛い!買って下さるファンの人にいいものを届けられないと申し訳ないし、メーカーさんや事務所さんにも「できるだけ叶えて下さい」とプッシュしまくっていて申し訳ない。それで、苦情がアーティスト本人に届いたりしたら、それまた申し訳ない。友人からは、「じゃあ、止めれば(笑)?」ってアドバイスされるけど、それならば前を進みたい!(あー、面倒くさい奴(=私))

でも、せめて愛をこめて取り組みたいですし、その想いはスタッフの方も一緒だと思うのです!だから、今回も発売までいろいろお手伝いしたいです。どうぞ一緒に楽しみになさってください。せっかくのアニヴァーサリー・イヤーですからね♪