323・「いじめやんといて」
トミーズ雅の1997年のシングル「いじめやんといて」 。当時は隠れたヒット曲だったが、最も多くの人に所有されているのは、10万枚以上のヒットとなったコンピレーション『大阪ソウルバラード』(2003年)だろうか。歌詞は、こちら。試聴は、あちこちで可能。
この歌、ちょっと聞いてみたら、いかにも“やしきたかじん”系のバラードなんだけど、まさに3分間に凝縮された濃厚なドラマだと思う。以下、私が歌詞から類推したこと。
・主人公の女性は、好きな男性と一緒に暮らしていない
・男に“こんなとこ辞めろや”と言われるような所にお勤め(これが“こんなコト止めろや”ならば、また大きく意味が異なる)
・“どうにもならへん”事情がある(金回りか?→世間的に蔑まれつつも、手っ取り早く稼げるところ?)
・大阪が“レイニータウン”なのはおそらく心象風景
・街の星がぼんやりしてるのは、淀んだ空のせいか、それとも涙混じり(ゆえに星が出ていてもレイニータウンなのか)に見ているせいか(“駅の灯がうるんでる”効果ですね)
・男は夢を真剣に追っている様子(口先だけではない)
・そのせいか、女に“何もしてやれへん”と甲斐性なさを詫びる
・女の父親は寝たきり(ゆえに、やはり金回りの事情か)
・“背中のぬくもり”から、親密にならないギリギリの関係
平成に発売された歌だが、見える景色は物凄く昭和。だけど、同じく昭和の上田正樹「悲しい色やね」や、桑名正博「月のあかり」にも勝るとも劣らない名曲だと個人的に思う。ちょっと状況がシリアスすぎて受け付けない人もいるかもしれないが、それを中和しうるトミーズ雅の歌も味があるし、彼が例えば大阪特番で歌うとか、あるいは誰かがカバーするとかで再度注目されればいいなと勝手に期待している。