T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

477・他人の街(工藤静香)

Rise me

Twitterをしていると、こんなことがよくある。私が、ある情報やデータを流したとする。すると、何度もリツイートや「いいね」登録をしているようだけれど、決してフォロワーにはならない、という人を見かける。

その時、私の中にある感情が生まれる。

それは、リアルな人間関係でも以前から生じていた。例えば、中島みゆきファンの友人に、工藤静香中島みゆきの曲を歌っているよと教えると、その曲は聴くけれど、それ以外の工藤静香の曲は一切聴かない、と言われた時など、結局広がりのない音楽ファンに出会った時だ。

別に正義とか道徳とかを振りかざす気などさらさらない。ただ、少しだけ淋しく感じる瞬間がある。いや「淋しい」というほど切なくはないな。少しだけ、ほんの少しだけ「情報」じゃなく「人」を感じて欲しいなと思うことがあるのだ。

こういう喜怒哀楽が明確じゃない感情って歌にしづらいな〜と思っていたら・・・あった。それがタイトルに書いた工藤静香の「他人の街」だ。93年に工藤静香が発表したアルバム『Rise me』の1曲で、中島みゆき作詞、後藤次利作曲。(ゆえに、工藤静香My Treasure Best 中島みゆき×後藤次利コレクション』に収録されています〜。)

歌詞はこちら

発売当時は、アルバムの中の1曲で、ラブソングでもないし、私が好みがちなベタなバラードでもないし、なんだかよく分からないな〜、同じアルバムオリジナルでももう1曲のラブバラードの「そのあとは雨の中」の方が心に響くなぁ、とあまり深く聴かずにいたのだ。しーちゃんファン&みゆきさんのWファンであるにもかかわらず。(ごめんなさい!)


「それは書かれるほど むなしくはない」・・そうそう、別に誰かを責めようとも思わない。ただ
「人から人への距離が少し遠い」・・そう、サクサクと情報だけ集められる感じが、「少し遠い」、その程度だ。
でも、それを批判するのでもなく「やさしすぎて臆病になった」と自分に言い聞かせるように理由を探す。この部分の解釈は人それぞれだろうけど、私自身は「あまりに自分が構われずにいること、それは相手の優しさかもしれないけれど、誰にも話しかけられなくて、一瞬、街が怖くなった」くらいに受け取った。
そして「ただそれだけ」と結ぶ。そう、本当にただそれだけなのだ。本来、歌にもならないほどの微々たる感情だ。

いかにも21世紀にあてはまりそうな状況を20年以上も前から言い当てていたなんて、やはり中島みゆき恐るべし!みゆきさんはよく、「時代が取り残したものを後から拾っていく」というけれど、時々、時代を随分と先回りしている気がすることもある。これは、単に時代が繰り返しているということなのか。

ということで、どこかで興味を持ってくれたら嬉しい、とてもささやかだけど、現代だからこそ胸に響く歌だ。