T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

374・言葉に心あるかないか

Clavis~鍵~

今、ある実力派女性歌手のベスト的なCDを聞いている。その歌手は、途中長らく休みながらも最初のデビューから40年近く経つのに現役感バリバリの歌唱で、しかも、タメる所はタメて歌いつつも、リズミカルに歌う部分はピッチよく歌って、きっとすごく努力されてるんだろうなぁ〜と驚くばかりだ。過去のヒット曲を今様に歌いなおして、「前の方が良かった」と言わせない実力も十分に備わっている。(勿論、オリジナル至上主義の人は、もうハナから例外だけど)

しかし。。。。本当に申し訳ないのだが、演奏が驚くほどチープだったり、マスタリング前の音源かと思うくらい全体に低音質だったり、デュエット相手にエコーかけまくりでスナックでの盗み撮り状態だったり、インディーズでももっとまともなのに、余りにも低予算で作られたものだと分かるもので、なんと言えばいいのか、日頃スーパーポジティブなレビューを書くよう心がけている私だが、これはすごく難しいなと思った。両手を挙げて褒めちぎれば、それはそれであまりに嘘くさくなるし、かといって、貶すようなことは絶対にしたくないし・・・。そう考えると岩崎宏美中島みゆきは最高潮のセールスには及ばなくても、お金がなくて手を抜いたというのはなく、最新作を聞ける自分は幸せだなぁと思った。

そんな風に言葉の発し方をどうしようか、なんて考えている時、最近、頭の中で流れるのが、工藤静香の「Clavis -鍵-」。

中島みゆきは、「群衆」とか「他人の街」とか、なぜか工藤静香への提供作には、世知辛い世の中をラブソングに織り込むことが度々あって、その時の彼女には、経験不足だったり、幸せモード全開だったりで、そこまで解釈が進んでないと思えるものがあり、この「Clavis -鍵-」も、しーちゃんがドスを聞かせて

♪心あるかないか探し続けている 
誰もみんな自分ひとりだけで見つけるのは難しい〜

なんて歌っても、なんか・・・ピンと来ないな〜、やっぱ「FU-JI-TSU」とか「慟哭」とか状況が見えやすいのがいいな〜とか思っていたけれど、こうして人を信じるかどうか、また人に信じてもらうかどうかと考える時、そこに「心」を乗せられるかどうかって、すごく重要で、自分自身も心ない言葉にならないよう気をつけてるな〜と思ったら、それよりも随分前にこの歌が教えてくれてるんじゃないか、やっぱり深いなぁ、みゆき様〜!!と改めて驚いた次第だ。

とそんな風に考えつつも、心ある言葉で冒頭の素晴らしい歌唱の作品を語るとすると、

「ボーカルに集中して聞いて下さい!」

となるだろうか。でも、超コアファンの人は、(良くも悪くも)もともとそこにしか耳がいかないだろうし、逆に気にならないのかもしれない。つまり、私の杞憂かもしれないと思えば、少しは心が救われた。とにかく、それが売れて、次回以降はお金も時間もかけて、より良い作品に挑んで欲しいと願った。