431・“詠み人知らず”になれなくて
先日、私が数年前に企画・監修を手がけた数十タイトルのCDがMEG-CD (オンデマンドCD-R)にて一斉復刻されることになった。パッケージ販売が一旦なくなった時点で、私の印税は切れており、わざわざ事前に連絡がなかったとしても当然で、無論、法的にも全く問題もない。
ただ、あの頃、売上を伸ばす為に、ボーナス・トラックを追加で探しまくったことや、マスターテープに残っていたノイズの除去を見つけては修正をお願いしたこと、ライブ録音などは曲に関係のないMCの場合、ランダム再生の際にカットされて流れるようにしたこと(これは、他のLIVE CDを聞いてもらえば快適さが分かります!)など、細かい作業を大量に施しているので、なんというかそれらの苦労も知らずに、そのままコピーされていくことに、いくばくかの寂しさを感じる。私はそこにいなかったことになるのか、と。
松任谷由実が究極の目標として、「私の名前が忘れられても、いくつかの曲が“詠み人知らず”として見知らぬあなたに歌い継がれてゆくこと」を掲げているけれど、私は、自分が生きた証をどれだけ残せるか常に考えているので、ああ、まだまだその境地には辿りつけていないな〜とも思う。もっともっと良い仕事が出来ればいつか自分もそうなれるのかな〜。でも、逆にそうなれないのならば、せめて、自分が楽しく生きられていることは誰のおかげなのか、より意識していきたいものだ(微笑)。