T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

136・歌謡曲ボヘミアン

 先日、忘年会に誘われて新橋の某“歌謡曲リクエストバー”に初めて行った。私はその場で“アイドル評論家”として紹介され、まぁ普段なら「現代の音楽マーケット全体を見ています!!」とかゴチャゴチャ注釈を付けたくなるところだが、酒場の会話でムキになるのも場違いだし、アイドルも好きだし大間違いでもないし、むしろマニアの方と比べればそんなに詳しくないのにプロとして一目置かれるのは有難いと思うことにした(←いつも、私は相手から発せられたたった一言について、こんなに考え込む傾向がある。だから、サクサク流行モノに飛び込めないのだ(苦笑)。)

 しばらく経って、「プロらしく隠れた名曲をリクエストして下さいよ〜」なんて言われたので、とりあえず岩崎宏美「未完の肖像」をリクエストしたら、映像ストックなし、と言われ、まぁ作品の完成度はどうあれ、当時はさほど売れてないから仕方ないか、と思い、じゃあ、河合奈保子「ジェラス・トレイン」ならあるかな?と思いリクエストしたら、これまたストックなし。 「そんな、TOP10にも入ってないような売れてない曲、ある訳ないですよ〜」なんて嘲笑され、心の中では「奈保子ファンの中ではかなり人気上位だし、当時オリコンでも2週連続6位でランクインしているのに!!!」と相当に憤慨しつつも、そこは四十路、にこやかに営業スマイルで「いい曲なのに、悔しいな〜」と道化を演じ、別の曲を探すことに。

 いつも気になるのだけれど、こういう時、“自分が知らない=きっとヒットしていない”って決め付ける人は、自分のリサーチ不足とか、自分の頭の硬化を疑わないのかなぁ。あと、メガヒット曲しか理解できない人は、例えば文学や映画でも、メガヒット以外には冷たい視線を送るのかなぁ。加えて、そういう超メジャーが好きな人って、女性アイドルならば決まって松田聖子ファン(しかも85年で止まっている)だったりするから、これまた面白い。『永遠の少女』あたりも聞いてくれるといいのに。

 ともあれ、こういう所では、例えば「家路」や「エスカレーション」以下の売上だとしても、早見優夏色のナンシー」、堀ちえみ「リ・ボ・ン」、石川秀美「ゆ・れ・て湘南」あたりは抜群に盛り上がるのが再認識できて、こういう判断基準ってコンピの仕事でも活かせるからそれはそれで勉強になったし、初めての方ともご挨拶できて良かった。

 ドメジャーの所で浮いてしまう私だが、その一方で、かつて、歌唱力も売上も関係なく女性アイドル全般の方と話をしていた時も、物凄く浮いていた。そういう方たちとの会話から、例えば本サイト的な引き合いに出すと、 岩崎宏美よりも大場久美子の方が歌が上手い」とか「河合奈保子よりも比企理恵の方が味わいがある」とか真顔で言われたことがあり、「自分が好き」とか「どうしても気になる」とかだったらまだしも、あからさまに優劣で発言されて、ちょっと困ルンバな私だった。私だって80年代でB/C級扱いされる中でも、岡本舞子桑田靖子、石坂智子、伊藤智恵理姫乃樹リカあたりはCDも買っているけど、そういう買い方をしている人って、逆に少なくて、やっぱりそこでも浮いていた。

 つまり、私は、メジャーな所でもマイナーな所でも浮いてしまう“歌謡曲ボヘミアーン”なんだと、つくづく思うのだ。(ついでに言うと演歌難民でもある。その話はまた別の機会に。)でも、こんな変な聴き方をしているのに、ネット上の音楽ファンの方とか仕事で声をかけてもらえるのはとても有難いことだ。いつまで必要とされるのか分からないけれど、今後もあたたかく見守っていただけると幸いです