T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

490・柏原芳恵「太陽は知っている」

1985年7月3日(ちょうど31年前!)に発売された柏原芳恵レギュラーシングルの通算22作目渡辺美里杉山清貴の同名異曲ではない。

80年デビューの中では奈保子第一党(微笑)の私ではあるが、この年の柏原芳恵は、大好きなシングルが揃っている。

穏やかなメロディーとコーラスワークながら、秘められた恋を歌う中島みゆき作詞・作曲の「ロンリー・カナリア」、テレサ・テンに続けとばかり叙情歌謡路線に突入した「待ちくたびれてヨコハマ」、そしてこの「太陽は知っている」の後が、高見知佳シングルB面曲の焼き直しだが、道ならぬ恋を切々と歌い上げたオリジナル色の高い「し・の・び・愛」と、(ワタシ的には)まさにエエトコドリだ。

だけど、この情報が溢れた時代に「太陽は知っている」に関する感想レビューが1件もヒットしないのは、あまりにも勿体ない。いや、芳恵さんの悪女路線=「ちょっとなら媚薬」「悪戯NIGHT DOLL」そして本作は、いずれも前作のセールスを大きく引き下げたので、需要が少ないのは重々理解している(あまりにもフィクションと思えないから?(汗))。だけど、需要のなさと、楽曲の完成度は別物なワケで、とはいえ当時のTOP10ヒットでもあり、やはり埋もれさせるには勿体無いので、私ごときが語ってみたい。


まず、当時のシンセサイザーど真ん中のイントロ(編曲は、この頃の彼女の楽曲に多い渡辺博也氏)。前年の彼女のアルバムでやたら評価の高い『ラスター』や、河合奈保子「微風のメロディー」「潮風の約束」のような涼しげな音色が好きな人なら絶対にハマりそう。コーラスが徐々に乗ってくるのも私が好きなパターンだ(笑)。

作詞は、松井五郎で、フランス映画『太陽が知っている』をもじった辺り、同年末の岩崎宏美『cinema』に継承されているし、女性詞だと狂おしさを出すのが絶妙な松井さんだけど、柏原芳恵というキャラを投影したのか、本作ではドライな恋愛観がさまになっている。

因みに歌詞はこちら

作曲は、83年の「夏模様」の成功に気をよくしたのか、2年ぶりに松尾一彦(当時オフコース)を起用。「夏模様」の穏やかさも素敵だが、静かなAメロから、徐々に昂ぶるBメロ、そしてサビでスパークするというダイナミックな曲想は、松尾さん本人も「夏模様」以上に気張っている。(気合いが入るほど、逆に売れなくなるのは、自作期直前の河合奈保子にも多数見られる現象ですね。。)

そして、こんなあれこれ特筆すべき楽曲を、柏原芳恵がいつもの涼しさと激しさを上手く使い分ける、独特な表現力で歌っていて、しかも遠目に見れば「あれ、口パク?」と思えそうなほど、レコード再現性の高い歌唱をTV番組でも披露していた。それだけ本人にハマっていたのだろう。

ということで、あまりご存じない方は、どこかで動画があれば堪能してみて(著作権でガッツリ生活させて頂いているので、非公式なものはリンクできません。でも、それが、購入のキッカケになる人がいる事も存じております。そこまで堅物でもないのです)。

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