T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

350・唇のプライバシー

もう、河合奈保子ファンにとっては超有名曲で、この歌で紅白歌合戦や賞レース等音楽番組に出まくっていたので、今更なんだけど、最近、特に『A面コレクション』の発売あたりで聴き直して、私ってこの歌を、そこまで理解していなかったなぁと、またまた自分の理解力のなさに呆れてしまった

いや、歌唱賞を取ったくらい、奈保子さんの声の伸びもすごく良くメロディーが計算されていますよ。「ヒーロー」モロパク(笑)なイントロも気合が入った証拠。EVEのコーラスも、これか「コントロール」の吼えっぷりが絶好調だし、私も大好き。

で、今回、それらの注力っぷりも半端ないんだけど、売野雅勇の歌詞を読み直してみたら、この時期の売野さんは激多忙だったはずなのに、完成度がかなり高くて驚いたのだ。奈保子に命懸けだったんじゃないかと思ったほど。ちょっと順を追って見てみる。

(1)タイトル「唇のプライバシー」もうまいが、「初めてだけど初めてじゃない」とか「私なら多分例外だって」とかキャッチコピーらしき表現がわんさか(流石コピー・ライター出身だけある)

(2)「あなたの知らない私」とか「ひとつだけ〜/ふたつの胸」とか対句表現も珍しく(?)キマっている

(3)ブリッジの「届かない」「届かない」「届かない」3連発で、もどかしさを爆発寸前までエスカレート!

(4)「ふたつの胸」は、表層的には巨乳アイドルを彷彿とさせつつも、実際はここで「二つのハート」を表していて、つまり真実を告げたい気持ちと、真心だからこそ隠したい気持ちの両方を指していて、浅く刺激的に捉えても、深く読み取っても理解できる。

(5)キワどそうな言葉を並べつつも、決して下品にならず(この辺は千家和也の青い性路線とは対照的)、全体のストーリーや感情の流れも見やすい

ということで、歌詞・曲・アレンジ(コーラス含む)・歌唱とどれもMAXで、この作品、きっと制作会議あたりでは、「これはイケる!!」とか満場一致していたんだと思う。因子分解して、説明されればされるほど、旨みが出てくる楽曲は、得てしてそうなのだ。

しかし、実際には、その力みっぷりが過剰だったのか、セールスも高初動型となってしまいロングヒットにならず、結局前作割れしてしまった。

私自身も、大好きだけど、これよりも「どこ行っちゃうの?奈保子さーーん」的なアイドルのお約束をハイレベルにぶっちぎった2作後の「ジェラス・トレイン」に心奪われてしまっていて、この歌の凄さを十分に理解せずに28年。こんなんでもプロやってるよ、と怒られそうですね(汗)。

ということで、30年前後経っても色褪せない名曲のお話でした♪