409・ヒット曲≠週間CD順位

先日、日経トレンディネットの連載でサウンドスキャンのデータ提供をしてもらっている会社に伺ったら、あるアイドルグループのファンから団体でクレームが寄せられているということをおっしゃっていた。

なんでも、オリコンではTOP5確実なのに、“ネットで検索できる”サウンドスキャンTOP20に一向にランクインしないのは、データの間違いではないか??という件で、問い合わせがあるらしい。中には、「オリコンでは○万枚も売れているのに、サウンドスキャンでは0枚なんておかしいのではないか？」なんて意見もあるとのこと。

様々な市場分析用で、毎週100位までデータをもらっている私からすれば、それらのアイドルグループが、たとえTOP20に入っていなくても21位〜40位あたりに5種類〜10種類出ている単品のCDが分散してランクインしているのは把握しているし、サウンドスキャンは1枚レベルで計上されるから、「0枚」であるはずもない。また、その分散した数字を集結させたとしても、オリコンの週間売り上げ枚数と乖離しているのは、個別握手券や自社サイト限定盤がサウンドスキャンでは集計対象外だから、サウンドスキャンを一般流通分のヒットと考えれば、別におかしくもないものだ（むしろそれが正しい）。

今回の件で、やはりというか、（私も含め）人間には、自分に都合の良い事実を正義と捉え、それと異なるものは批判的に見てしまう所があるのかもと学んだ気がした。近年のオリコンの、　事前申請さえ通ればもはやCDじゃなくても（ダウンロード権利のあるブロマイドカードでも、パンフレットメインでCDがオマケでも）チャートへの組み込みOKという“なんでも来い”状態になった数字群に慣れてくると、それ以外のチャートがすべてニセモノに見えてくるから不思議。

ちなみに、先週のレコチョク＆iTunesシングルダウンロードでそれぞれ１位、2位だったJUJUの十八番バラード「守ってあげたい」だが、オリコンでは27位。1種類のCDで（ましてやソロ歌手だからメンバー推しが分散しない分、尚更に不利）、握手券もLIVE特典もDVDもなければ、この週間ランキング25位〜40位というのはそこそこのヒットなのだ。というか、1種類しか出していないアーティスト限定では、JUJUはゆずに次いで実は2番手のヒット。しかも、歌詞検索も動画検索も上昇中で、言い換えれば、オリコンの数字だけが異常にこのヒットを過小評価しているようにも見える（笑）。

もっとも、AKB関連グループのファンのサイトなどを覗いてみると、オリコンの数字で「ファンのまとめ買いが増えたか」を考察し、サウンドスキャンの数字にて「一般ファンが増えたか」を分析するなど、思いのほか冷静で興味深い。彼らファンは、その50万枚、100万枚がかつての大衆ヒットの指標だった50万枚、100万枚とは意味が異なることなんて百も承知なのかもしれない。

とにかく、オリコンのシングルの数字で、しかも1週間で、ヒット曲かどうかを判断したり、他のアーティストや集計機関を批判したりするのは、もう完全な時代錯誤だと、早く気づいて欲しいものだ。その数字はその数字として、ファンの団結力やスタッフの（数字を組み入れる為の）アイデア力を読み取れば十分楽しめるものなのだから。