T2U音楽研究所~はてな置き場(旧:私を支える音楽と言葉)

T2U音楽研究所/臼井孝のはてな版です。

433・数字を知るのは幸せか

EAST ASIA(紙ジャケット仕様)

ここ数ヵ月、毎日朝5時に起きている。より正確に言うと、配信サイトの選曲仕事を受け持つようになってから、週に2回は自主的にデイリーの配信ランキング更新時の朝5時にチェックするようになり、それが習慣となり毎朝起きてしまうのだ。

配信サイトでの選曲は、CDチェーン店での仕入れアドバイスをしていたのとやっている事は基本同じ、つまりお客様が買いそうなものをリストアップするというのは同じなのだが、大きく異なることがある。当然、CD購入者とDL購入者も大きな違いで、これは日頃のマーケティングで実践してきたことなのでさほど問題ではない。(ここでも10年来の自主的な学習が仕事に活きる偶然に感謝!

最もネックとなっているのは自分の仕事がダイレクトに売上金額という「数字」にすぐ現れてしまうことだ。現在の単曲配信ビジネスはご存知のようにパッケージよりも世知辛い時代、普通に良いと思って選曲しても前年比3割減になってしまうのだ。今のところ、様々な改革を試みてクライアント様に満足いただいているが、その「数字」次第で、いつクビになるのかわからないし、この逆境で燃えてしまう性格ゆえ(苦笑)、自分が出来る範囲なるべく頑張って・・・と、ピリピリして結局毎朝早くに起きてしまうのだ。

以前、CD店のサポートしていた頃は、私が「理想」の仕入れラインナップを作っても、お店に資金力がなかったり、それ以前に過剰在庫処分の問題があったり、私の机上の理論よりも日頃接待を受けているメーカーのゴリ押し営業を受け入れるという怠慢店長がいたりで、遅々として進まず、そうこうしているうちに親会社が代わってしまい結果を出せずして仕事が終わってしまったこともあった。また、たとえ実現したとしても、スタッフや立地条件などから、それが良かったかどうかの「数字」が出るのは、ずいぶん先となる。

ただし、リアルショップでは、分析をすることで店舗ごとに強いジャンル/弱いジャンルがあることを見出し、過剰在庫問題を直視することは出来た、ということで実益に直結せずともコンサルティングのお仕事を達成した分の報酬を受け取ったのだ。

つまり、以前は結果の「数字」が出ていなくても仕事として成立したのに対し、今の配信ビジネスでは、「数字」がすぐ出てしまい仕事の継続の可否が早期に判断できるということだ。幸いにして、今の配信ご担当者は器の大きな方で長い目で見てくださっているが、もし、数字の中身や背景を見ない人だったら、悪い「数字」だけを見つけては私を辞めさせるかもしれない。

そんな感じで、こうして「数字」がすぐに出てしまうことは、本当に幸せなのかなとあらためて思った次第だ。しかも、その数字の内訳を見ずに判断する人も多くなっている。例えば、オリコンの数字で1万枚と出ても、30種類で1万枚の作品と1種類で1万枚の作品は「購入人数」が大きく異なるのに、一義的に順位で一喜一憂するファンがいるというのも端的な例だろう。いっそそんな数字なら見ない方が、本質を見極められるのかもしれない。本当、「数字」って怖い。でも面白い。そして、また今日もせっせと、人と音楽をつなぐ方向の参考値として「数字」を活用している。

ジャケットは、この仕事で、大抵上位に選んでおくと売上金額が急増する中島みゆき「糸」収録の『EAST ASIA』。そういえば、『Singles2000』ばかりが売れている印象のあるみゆきさんだが、オリジナルCDアルバムも結構上位にある。最新オリジナル『常夜灯』を除くと何が1番売れているかお分かりだろうか?次回は息抜きにそのランキングでも紹介しましょう♪